天に昇りそこねた亀たち

むかしむかし、ある池に、たくさんの亀が住んでいました。

ある日の事、亀の大将が言いました。

「何でも竜は、海に千年、川に千年住むと天に昇るそうだ。このわしは、この池に三千年も住んでおるから、もうそろそろ天に昇ってもよいのではないかな」

そして亀の大将が天に昇ろうとしたので、それを見ていた息子の亀が言いました。

「それなら、わたしも一緒に連れて行って下さい」

すると、その息子の嫁の亀も、

「あなたが天に昇られるのなら、わたしも連れて行って下さいませ」と、頼んだのです。

そうして次から次へ、孫亀も、ひ孫亀も、みんなみんな、

「わたしも、連れて行って下さいませ」と、頼んだのです。

そこで、亀の大将は、

「よしよし、それなら、みんな一緒に連れて行ってやろう。だが、いくらわしでもみんなを抱える事は出来んから、みんな順々に前の者の尻尾をくわえるといい」と、言って、自分のしっぽを息子にくわえさせて天に昇り始めました。

そして息子の尻尾を嫁が、嫁の尻尾を孫がと、その後に何千匹、何万匹の亀が、順番に前の亀の尻尾をくわえて、だんだんと天に昇って行ったのです。

ところが、間もなく天に着くというところで、亀の大将が後ろを振り向いて、

「おーい、みんな、無事について来ておるか?」と、尋ねたのです。

するとそれを聞いた亀たちが、

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」・・・・・・。と、みんな返事をしたので、くわえていた尻尾をはなしてしまい、みんなあっという間に元の池の中に落ちてしまったのでした。

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