モモちゃんとオバケちゃん
モモちゃんは、よるが、きらいです。まっくらが、こわいからです。
あるよる、おトイレにいこうとおもったら、だれもおきてくれません。がまんできなくなって、ゆう気を出して、ひとりでいくことにしました。
キッチンのほうから、あかりが見えます。モモちゃんは、そおっと、ドアをあけました。そこには、白いふくをきた、小さなオバケが、れいぞうこをあけたまま、ハムをおいしそうに、かじっていました。
モモちゃんは、びっくりしたけど、こわくない、かわいいオバケなので、声は、出しませんでした。モモちゃんは、チョコレートや、いろいろなものがなくなったことをおもい出しました。
「おにいちゃんじゃなかったんだ。」モモちゃんは、そおっと、オバケに声をかけました。
「あなたは、だれ?」
「ぼく、オバケちゃん。」
「わたしは、モモ子。オバケちゃん、わたしのチョコレートたべたの?」
「うん、そうだよ。とってもおいしかった。」
「おにいちゃんのカードがなくなったのは、あなたがやったの?」
「ああ、これ。とってもきれいな、かみだから、ひろったんだ。」と、ポケットから、キラキラひかるカードを三まい、とりだして見せました。
「そのおかげで、わたしとおにいちゃんは、ケンカをしちゃったのよ。」
「ごめんね。知らなかったんだ。」
モモちゃんは、きゅうにだいじなことをおもい出しました。トイレにいくことです。
「ど、どうしよう。おしっこいきたかったんだ。オバケちゃん、おトイレついてきて!」
「どうして。」
「だって、オバケが出そうだもん。」
「ぼく、オバケだよ。」
オバケちゃんは、しかたなくついていくことにしました。モモちゃんは、おトイレから出てくると、
「どうもありがとう。まっくらこわくないの?」
「ぼく、まっくらなれているの。それにね、れいぞうこのたべものをたべても、おこられないしね。」と、オバケちゃんは、わらいました。
「それより、モモちゃん、あそぼうよ。」ふたりは、かくれんぼをすることにしました。
「ジャン、ケン、ポン。」モモちゃんがおにです。「一、二、三……十。」
「もういいかい。」
「もういいよ。」
声は、リビングのほうから、聞こえてきました。
(まっくらなリビングは、こわいオバケが、いっぱい出てきそう。)
モモちゃんは、へやに、入ることができませんでした。
すると、テレビが、ピカッとひかって、オバケちゃんが、するするっと出てきました。
「なかなかさがしにきてくれないんだもん。まちくたびれちゃった。」
「ごめんね、こわかったの。」
「よく見てごらん。」
モモちゃんが、目をこらすと……。
時けいからは、ほそいひげをはやしたオバケが、ピアノからは、がっきをもった小さいオバケが、たくさん出てきました。
ソファーからは、ふわふわのマシュマロオバケ、かべにかけてあるえからは、目とはなのばしょがちがう、おかしなかおのオバケが、出てきました。
どのオバケも、おかしくて、ちっともこわくありません。
「みんな、ぼくのともだちだよ。」オバケちゃんが、いいました。
モモちゃんとオバケちゃんたちは、おにごっこをしたりして、たのしくあそびました。しばらくして、ふとったオバケが入ってきました。オバケの校ちょう先生でした。
「こらっ、オバケちゃん。」オバケちゃんたちは、学校のべんきょうがいやで、にげだしてきたそうです。みんなしょぼんとして、
「ごめんなさい。」
オバケの校ちょう先生は、モモちゃんにおれいをいって、オバケちゃんたちをつれて、かえっていきました。つぎのよるからモモちゃんは、ひとりでもおトイレに、いけるようになりました。
「もう、まっくらこわくないもん。また、オバケちゃんにあいたいな。」