豚の時計
ありよりも小さいブタがいるって、しってた?
小さくて小さくて、小さすぎるブタがいるんだよ。そのブタは、千匹で、むれになってくらしています。ある大きな時計の中で。その時計の名は、あの有名なブタ時計です。
一時と三時と五時と七時と九時と十一時になると、その千匹のブタたちは、みんなでがったいして、時計の真ん中で、一匹のブタの形になります。そのブタの大きさは、やっとありくらいの大きさでした。
そして、みんなで、「ブーブー。」とないて、時間を知らせました。
千匹のブタは、ふだんは、時計の中で生活しています。食べ物は、時計の中のゴミです。このブタたちにとっては、とてもすばらしいごちそうです。ねるときは、はぐるまの間に一匹一匹はまってねます。小さすぎて、つぶれないからです。九百九十九匹だけは、とても幸せでした。
でも、のこりの一匹は、いつもプンプンおこっていました。それは、しっぽの一番先の役のブタ、ブーブーでした。
「どうしてぼくだけ、目立たないしっぽの先の役なんだ!」
そのため、のこりの九百九十九匹のブタは、少し気分が悪くなってしまいます。
ある日、一時になって、みんながブタの形になったのですが、一匹だけたりません。そう、ブーブーがいないのです。ブーブーは、まだ時計の中です。プンプンおこっているようです。
一時一分になりました。九百九十九匹はしかたなく、ブーブーなしで時間をしらせると、時計の中へもどりました。ブーブーは、うでぐみをして、プンプンおこっていました。三時にも、五時にも、ブーブーは、出てきませんでした。
七時三分前。トントントンと、時計のドアをたたく音がして、一匹のブタがあらわれました。そのブタは、千匹のブタと同じ大きさでした。そして、はずかしそうに、言いました。
「初めまして。えーっと、なかまに入れてもらえませんか。おねがいします。」
「それは助かる。しっぽの先の役でもいいかい?」
と、みんなが聞きました。
「もちろん。なかまに入れてもらえるのなら、しっぽの先の役だってなんだって、よろこんでやらせていただきます。ぼくは、プーと申します。」
そして七時。プーは、ドキドキしながら、時計の表へ出ると、みんなとがったいして、一匹のブタになりました。そして、みんなと、
「ブーブー。」 なきました。とても幸せでした。九時も十一時もプーは、しっぽの先にならんで、みんなと、
「ブーブー。」 なきました。
一方、ブーブーは、はじめは、
「もうブタのしっぽ役は、しなくていいんだ。」
と思うと、とてもうれしかったのですが、だんだん落ち着かなくなってきました。
そして、一時十分前。とうとうブーブーは言いました。
「もうだめだ、がまんできない。やっぱり、ぼくは、しっぽ役が大好きなんだ。しっぽ役をもう一度したいよう。」
「それじゃあ、ぼくは、どうなるんですか?」
プーが心配そうに言いました。
「それならだいじょうぶ。しっぽを一匹分長くするんだ。プーは、いつもの場所にならべばいいんだよ。ぼくは、プーの後ろにならぶから。」
ブーブーが言いました。そして一時。とてもすばらしい、しっぽが一匹分長くなった幸せなブタが、時計に登場しました。